◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
愛里に、嫌いな味の有無や酒に対する強さを確認すると、マスターが手品師のような手つきで酒を混ぜ始め、さっそくカシャカシャとシェーカーを振り始めた。
耳に心地よい音を聞きながらわくわく待っていると、
「作っておりますのは『宮廷プリンセスナイト』より、主人公番子(ばんこ)でございます」
にっこりと微笑んで、そう教えてくれる。
うわあ~!
自分の作品のタイトルを、自分以外の人が自然に口にするだけで、なんだかもう胸がときめく。
頭の中にだけ存在しているキャラクターを、他の人とも共有したくて、苦労に苦労して漫画という形にするのだ。
今頃あのマスターの頭の中を、自分の作品のキャラクターが駆け回っていると想像するだけでテンションが軽く振り切ってしまう。