◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
 ほどなくして逆三角形の細いグラスに金色の液体が満たされ、ライトアップされてピカピカに輝く。

「お待たせをいたしました」

 そこにはたしかに『宮廷プリンセスナイト』主人公の番子を思わせる金色のカクテルが置かれていた。

 オリジナルキャラクターというのは我が子同然だ。今だけは母親が幼稚園のお遊戯会で我が子の雄姿を目に焼き付けるのに必死になる気持ちが愛里にもよくわかる。

「いただきます」

 はやる気持ちを抑えながらグラスに口をつけ、一口飲む。

 キリッと刺激的な味で、なんだろう……? 見た目通り柑橘系の味もするけど、もっと別の甘酸っぱさ……

「番子の金髪を黄色すももで、胸の奥に秘めた熱い決意をジンで表現しています」

 ああ、すもも!
 すももなんて久しぶりに味わった。この独特な雰囲気が番子みたい。

「このレシピは「ミラクル」という名前でして、数々の奇跡を起こした彼女にぴったりかと」

 粋な名前のレシピを引っ張ってきてくれていた。
< 241 / 295 >

この作品をシェア

pagetop