◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
差し出されたグラスを受け取り、尚貴の真似をしてストローを二本ともくわえて飲む。
創作者としてキャラクターカクテルの味を共有したい気持ちと、
……尚貴との間接キスに戸惑う気持ち。
「ほんとだ。とってもなめらかで甘くて……、甘々の愛情をくれるハル王子だ」
すごく、すごく甘く感じた。
「なおさんも、飲む?」
交換し合って、味をよく確かめ合う。
「ああ、これは強い番子ちゃんだね……。色もまぶしくて綺麗で」
唇を離した尚貴はそう感想を言うと、グラスを戻す。
親密な感じに、どきどきする。
だけどここはプライベートバー。別に誰に迷惑をかけているわけでもない。
手練のマスターも、若いバーテンダーも藤田家の雇った人間だし、壁際に控えて立つ郡山だってそうだ。
好きに過ごせばいいんだ。
その後も、バーテンダーと共に作品解釈を深めては、様々な角度からキャラクターカクテルを作ってくれた。尚貴の漫画作品のカクテルも、初めは色鮮やかなだけだったのが、創作者の意図を聞いてどんどん変化していった。
こんな風に、自分の作品を深めていけるなんて、
隣に座る人と二人だけの甘い時を過ごせるなんて、
なんて贅沢なんだろうと思う。