◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
第32話 砂糖菓子のように甘い部屋
「ごめん、なおさん、私だいぶ酔いが回っているみたい。なんか、喋りすぎちゃった」
自分ばかり、しかも暗い話をしてしまった。嫌な女に思われただろうか。
ふと顔を上げようとしたとき、尚貴に頭を撫ぜられた。
そしてそのまま黙って抱き寄せられた。
「っ、なおさん……!?」
尚貴の広い胸が、温かく脈を打っている。
アルコールの匂い。こんなに近くに、なおさんが。
「僕は、エリンギちゃんの作品、とても素敵だったと思う。だから、少し悲しい」
耳元で囁く声に、愛里の胸がチクリと痛む。
でも、愛里が何か言うより先に、尚貴が続けた。
「でも、エリンギちゃんがうまくいってほしいと思うから、無責任なことは、何も言えない。とても頑張っているエリンギちゃんが、そう言うなら、そうなのかもしれない。わからないのは、僕が世間知らずだからかな」
そっと体を離すと、尚貴は愛里の手を握る。尚貴の大きな手が、愛里の右手を包み、もみ、ペンだこをさする。
「きっと、僕よりエリンギちゃんは、ずっと戦ってきた。だから僕は何も言えない」
「なおさん……」
「僕は、まだそこまでやってもいないから、まずはやってみるよ。思った通りに自由にやってみる」
「そうだね」
それでうまくいけば、それが一番いいのだから。
「お互い頑張ろう」
愛里は視線を逸らして、小さく言った。
世間知らずの御曹司。
野球選手になれると信じて野球に打ち込む少年のよう。
無邪気で綺麗で浅はかで希望に満ちている。
でも実際、フジタ王国の王子様だから、それでいいのかもしれない。
自分ばかり、しかも暗い話をしてしまった。嫌な女に思われただろうか。
ふと顔を上げようとしたとき、尚貴に頭を撫ぜられた。
そしてそのまま黙って抱き寄せられた。
「っ、なおさん……!?」
尚貴の広い胸が、温かく脈を打っている。
アルコールの匂い。こんなに近くに、なおさんが。
「僕は、エリンギちゃんの作品、とても素敵だったと思う。だから、少し悲しい」
耳元で囁く声に、愛里の胸がチクリと痛む。
でも、愛里が何か言うより先に、尚貴が続けた。
「でも、エリンギちゃんがうまくいってほしいと思うから、無責任なことは、何も言えない。とても頑張っているエリンギちゃんが、そう言うなら、そうなのかもしれない。わからないのは、僕が世間知らずだからかな」
そっと体を離すと、尚貴は愛里の手を握る。尚貴の大きな手が、愛里の右手を包み、もみ、ペンだこをさする。
「きっと、僕よりエリンギちゃんは、ずっと戦ってきた。だから僕は何も言えない」
「なおさん……」
「僕は、まだそこまでやってもいないから、まずはやってみるよ。思った通りに自由にやってみる」
「そうだね」
それでうまくいけば、それが一番いいのだから。
「お互い頑張ろう」
愛里は視線を逸らして、小さく言った。
世間知らずの御曹司。
野球選手になれると信じて野球に打ち込む少年のよう。
無邪気で綺麗で浅はかで希望に満ちている。
でも実際、フジタ王国の王子様だから、それでいいのかもしれない。