◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

「当日はお金がおろせなくなるということを聞きましたので、これだけあればいいだろうと思ったのですが、困りました。おつり、これでもよろしいですか」

「よろしくないです」
 今日ほど札束が不要な日もないというのに。

 百万円? もの大金が……こんなとこに持ち出されていることに緊張してしまう。

 この人の空気の中では、次には泉から出てきて金の斧と銀の斧を差し出してきてもおかしくはないけれども、こういう《《ありえない物》》を実際に目で見てしまうと、さすがにその重さにクラッとする。

「そうか、これでは品物をお売りすることができない。それは嫌です……ですからどうか」

 札束からぴっと一枚抜き取ってこちらに渡してくる。

 多すぎです!
 愛里は買い物用の財布をしまい、釣銭用のポーチを取り出し、

「ああ私、細かいのありました! おつりなくていいです! ついでに、両替もできます!! 一万円札も崩せますよ!」

 だからそんなものを押し付けてくるのはやめてください。しまってください。
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