◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
でも、
「私は酔ってるわ」
愛里はきっぱりとそう言って、尚貴の返事を待ってみる。
「なら、やめとこう」
気高さはそのままに、尚貴はにっこりと微笑んで引き下がる。
酒に酔わせて隙あらば、みたいな感情は全くと言っていいほどなさそうだ。
「ごめん……」
試すようなことをするのは可愛くないと反省する。
でも、どう答えたらいいんだろう。
まだ、付き合ってるわけじゃないし。
って、すっごく期待しちゃってるなあ、私。
「泊っていってもいいからね。僕は別室で寝るよ?」
「いっ、いえ、そこまでしてもらうわけにはいかないよ」
「うち、お客さんを泊めること、よくあるんだ。だから気にしなくていいよ」
「明日も仕事だから……」
「朝はもちろん送るよ」
「でも……うっ、吐きそう」
「ほら、いいから寝て。あとはメイドに任せて」
どうしよう、泊まるなんてだめだよ。
でも、うとうとと、まぶたが落ちていく。
お客さんをよく泊めるなんて、常識が違う……。
空調がよく効いた、砂糖菓子のように甘いこの部屋で、愛里は泥のように眠ってしまった。