◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
 父さんと喧嘩というのは、創作についてのことだろうか。

「うちでゆっくり話聞くよ……。部屋、散らかってるけど」
「うん……」

 たまたま、近いうち遊びに行ってみたいと言われていたから、掃除しておいて本当によかった。

 黙り込む尚貴を載せた車が、愛里の自宅に到着したのは夜九時だった。客人を招くには少し遅い時間だが、お金持ちの作業仲間がいることは両親に言ってあって、時折泊めてもらっていたことまで知っているので、多少目をつむってくれるだろう。

「お邪魔します」
「どうぞ」

 でもまさかこんな形で部屋に招き入れることになるなんて。

 尚貴の部屋とは比べ物にならないほど狭いが世間一般的にはとても標準的なサイズの自分の部屋に入れ、座布団を渡す。冷蔵庫にあった市販のお茶をコップに注いで、お盆に載せて部屋に運ぶと、ひどく喉が渇いていたらしい尚貴は一気に飲み干してしまったので、愛里は再度階段を下りて冷蔵庫まで戻り、今度はペットボトルごと持ってきた。

「家出、というか追い出されたって、いったい何があったの?」

 疲れた様子の尚貴だが、ここまで来た以上訊ねないわけにはいかない。

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