◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
ところで、郡山の登場で愛里はふとあることを思い出した。
「あ、これ使おう! なおさん」
机の引き出しから取り出したのは一通の封筒だ。
「これ、郡山さんから受け取った手切れ金なんだ。でも、もちろん一円も使ってないからね。連絡取っちゃったし……。なのでなおさんにお返しするね!」
なかなかいいタイミングで返すことになったと思う。
厳密には返す相手は違うような気もするが、そこはまあ、気づいていないフリをして尚貴に握らせる。
「でもこれ、出所は藤田ってことだよね」
「後で返せばいいんじゃない?」
「そうしようかな!」
「そうしよう!」
うんうん。きれいごとだけでは生きていけない。
郡山の視線が痛いが、無視を決め込む。
中を確認すると、三十万円が入っていた。
「なおさんの所持金と合わせると、四十万円だね」
「そうなるね」