◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
「うーん、なおさんはもう少し、雑誌の傾向と合わせた方がいいんじゃないかな? なおさんの独創的なところは捨てがたいけど、ちょっと売り物にならないと思う」

 愛里の見立てでは、尚貴は少々芸術的すぎるきらいがある。商業には不向きな作風だ。もっと読者にわかりやすい物語にしないと、いつまでたっても受賞は難しい。愛里自身、漫画雑誌の求めに応じた結果佳作を取れたと思っている。だから、間違っていないという自負もあった。

 しかし、

「……それはいやだ」
「え?」
「捨てたくない。僕は、これで行きたい」

 尚貴は頑なに、やり方を変えない。
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