◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
「そう思ったの。御曹司だった時も、好きだったよ。でも、でもね、夢を追うことに真剣で、それで、もっと好きになった」
ミニキッチンで皿を洗う音が止み、郡山は静かに退室していった。
静まり返る中で、愛里は告げる。
「私、なおさんの恋人になれないかな」
もっと近くにいたい。
一緒に住んだり、なおさんに触れたり、人生の多くを共にしたい。
このままでもいいけど、でも、もっと、近くに行きたい。
そう思ったら、自然と言葉が出ていた。
驚いたまま黙っている尚貴に、愛里は訊ねる。
「どう、かな?」
尚貴はまだ何も言わない。
愛里ははやる気持ちを抑え込みながら、じっと返事を待つ。
緊張味を帯びた尚貴の顔は凛々しくて、覚悟のある男の子で、この人と一緒になりたい、と思う。強く思う。
「ありがとう」
尚貴が淡く微笑んでくれる。
その笑顔に、どきりと鼓動が痛いほど高鳴る。