◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
愛里は小さく呼吸をした。
息が止まっていたらしい。
うん。
こちらこそ、こちらこそありがとう……。
「でも」
「え……?」
「ごめん、エリンギちゃんの想いには、答えられない」
すうっと、熱が冷たさに変わっていく。
氷になったように、血の気が引いた。
「なおさん……どうして……」
断られた……?
うそ、だよね。
「エリンギちゃんとは付き合えない」
「そんな……」
断られるなんて、そんなことだけは、思っていなくて、
頭の中が真っ白になった。
今さら告白なんて、要るかな? くらいに思っていた。
「どうして……?」
目に映るもの全てが褪せていく。
「僕は夢を追うんだ。だから、余裕がない」
尚貴の瞳は、凛々しくなりすぎていた。痛いほど。
「僕はもう、自分の無力さを理解している。それでも、なにを取るか考えたら、夢だった」
愛里は、力なく、視線を落とす。
そんな、そんなこと……?
「なにを取るか、なんて……もちろん、夢が優先なのはわかるよ。わかるけど、それでも……」
「エリンギちゃんを幸せにしたいと思ってたんだ。けど、現実は、厳しいんだね。よくわかったよ。それでも、夢を追いかける。僕はそう決めた。そんな、今の僕では、エリンギちゃんと付き合うことは、難しい」
袢纏姿も、穴を縫われた靴下も、愛しいよ? なおさん。
尚貴は力なく首を横に振る。
「僕なんかじゃなく、もっとふさわしい人と出会うべきだ。エリンギちゃんは」
「そんなことない……。そんなことないよ……っ!」
思わず袖をつかんで叫んでも、尚貴は黙って首を横に振る。
「付き合うことは、できないよ」
――どうしてわかってくれないんだろう。
「僕は夢を追うんだ」