◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
 愛里はためらわず、外に出ようとして、

「もう夜遅いので、私がお供します」

 後ろから、低い声と共に郡山が優しくドアを支えてくれた。

「郡山さん……」

 尚貴から離れたい一心で外へ出ようとしたものの、本当は今、一人になるのがつらかった。

「ありがとうございます」

 もしかしたらこの年上の男性は、それをわかってくれているのかもしれない。
 
 どこへ行くともなく歩いて、夜風に当たる。
 寒いなーと口々にぼやきながら、二人で夜の道を歩いた。

 愛里の足は自然と、小さい頃に友達とよく遊んだ公園の方へ向かっていた。そこに何かがあるわけではなくて、ただなんとなくだ。郡山はどこか行きたいところはないだろうか。そう思って訊いてみたけれど、「愛里様の仰せのままに」なんて言って、キザに片目を閉じられた。
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