◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
「さ、尚貴様、帰りましょう」
そう言って郡山は、積み上げられた段ボール箱を勝手に動かして片付けようとする。この人の郡山という人、歳はアラサーだろうか。三十は超えていそう。こんな場所じゃなくて、もっとお堅いオフィス街とか、取引先との接待ゴルフなんかに邁進している方がずっと似合いそうだ。
「だめだよ、まだまだ僕の漫画を買ってもらう予定なんだから!」
一方尚貴という名らしいほわほわした隣接サークルさんも、この場が似合うわけでもないけど。
「漫画?」
郡山は片付ける手を止め、鳩が豆鉄砲を食らったように目をぱちぱちとさせている。
「そうだよ。僕の描いた漫画を売るために、僕は一人でここまで来たんだ」