◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

 しかし、御曹司尚貴様は悲し気に首を横に振るのだ。

「いやだよ。これは、僕の物語だ」

 謎めいた芯の強さで言う。

「そんなことしたら、絶対に台無しにされるか、僕らしさなんてカケラも残らないに決まってる」

 どうやら金持ち育ちの発想は、さらに上を行くらしい。
 愛里には何が嫌なのかちょっともうよくわからない。けど、彼は当然だとばかりに、郡山の意見をはねのけた。

 スーツ男郡山は、押し黙ると、尚貴の作った漫画冊子をぺらりと一冊手に取る。そして数ページぱらぱらとめくると、無表情に言った。

「それはそうかもしれません。でも、こんなもの、誰が欲しがるというのです」

 その場がしんと静まり返った。ように愛里には感じた。

 こんなもの?

 今、なんて言った? この男。
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