◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
はたから聞いていた愛里だったが、感情が渋滞を起こしたようになって理解に遅れが生じた。
「帰りますよ、さ、片付けます」
そう言って手早く箱に詰めていく郡山を見て、
愛里の腹の底からムカムカムカっと込み上げてきているのは、たぶん、怒りの感情だった。
「こんなもの?」
今そう言ったよね?
その薄い漫画雑誌一冊作るのに、どれだけの時間と労力がかかるか知った上で「こんなもの」と言ったのか?
「こんなもの」を三箱も作って汗だくに入場し、「こんなもの」の角を大事に揃えて並べている彼の様子を思い出す。
そうだね、誰も欲しがらないかもしれないね。
それはその通りだ。
実際、誰も足を止めないし、泣いているのを気の毒に思った愛里が一冊買っただけだ。
コミケが素人の発表会だというようにバカにされていたのもまだ我慢できた。実際その通りなんだから。
だけど。