◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
全身全霊、怒りを込めて睨みつける。
私は怒りに震えているのだと。
その真剣さは、齢二十五の自分より年上であろう郡山という堅物にも、息をのませた。
わかったか、部外者。
わかったら出て行け。
ここはコミケだ。戦いの場なんだよ。
しかし、彼は予想に反したことを口にした。
「……では、私にも一冊いただけますか」
「え?」
「買ったら、ここにいさせてもらえますね?」
アラサースーツの郡山は、一冊買わせてほしいと、それを冗談で言っている感じではなかった。
その顔は今や無表情ではない。
こちらとまったく同じくらいの真剣さで睨み返している。
バチバチと火花が飛びそうなほど睨み合う二人の狭間で、
「郡山……、買ってくれて、どうもありがとう」
尚貴だけが、嬉しさの涙を目に光らせてにこにこと微笑んでいた。