◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
コミケは温かかった。
落選通知で不要の烙印を押された作品も、自分にとって半身、我が子同然で、
その想い入れを、熱量そのままに受け入れてくれた。
熱い思いをぶつければぶつけただけ、手に取ってくれた人の顔に笑顔が増えるのを実感できた。入念に準備をすればするほど、即売会当日は充実したものになった。
コミケの理念。
それは、すべての表現者を許容し、表現の可能性を広げる為の「場」であることだという。
そんな「場」がこの日本に存在してくれていることに感謝の念を抱かずにはいられない。
(一人でもいいから、私の作品に興味を持ってくれたらいいな)
愛里はそう願うような気分で着席し、来るべき時を待つ。