◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
尚貴は自分の分のボトルの水を一口飲むと、はにかみながらもじもじと、
「その……こちらこそ、さっきはありがとう、ございました」
打ち明けるように礼を述べてきた。照れたお顔も可愛らしい。
って、……さっきは? ああ、つい私が口出ししたことだよね……。
「私、出しゃばってすみません」
たしかにあの時は尚貴をかばったつもりだったけれど、事情がありそうだったし、余計なことしたかなって思いかけていた。
「いいえ、すごくうれしかったです」
にっこりと微笑む天使に、それならよかった、と愛里はほっとする。
誰だって、どんな形になったって、心込めて手作りしたものをけなされたら悲しい。無視されたら寂しい。漫画を作り続けてきた愛里だから、どうしても口を挟まずにはいられなかった。
「さ、もうひと頑張りですよ!」
そう渇を入れると、
「はい!」
尚貴は両手を軽く握って、頑張るぞのポーズを取る。
華奢で細身で、カーテンのような不思議な衣装が似合っていて、なんだか女の子以上に女の子っぽさを感じてしまう。
この人のそばにいると、愛里の中で眠っていた男性的な一面がむくりと鎌首をもたげてくるような気がする。
……ていうか、彼に恋する男子とか、いそう。