◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
広い敷地を抜けると、すぐにそれらしい高級車が出迎えてくれた。駐車場まで歩く必要さえなかった。おそらく、連絡を取り合って尚貴の到着に合わせ計算されていたのだろう。車の脇には帽子をおろした品のいい白髪の人(たぶん運転手さんだよね)が控えるようにして立っており、深々と一礼してくる。
「すみません、私まで乗せてもらうことになって」
運転手は郡山と協力して荷物の積み込みを全部やってくれ、愛里のためにドアを開け、天井に頭をぶつけぬよう白手袋の手をそっと添えてくれた。
(ひゃー……なんかもう、私、場違いだよ)
いや、どっちかというとこの車の方がコミケ会場にそぐわないことを思い出し、どうにか平静をキープする。
尚貴と愛里を後部座席に、助手席に郡山を乗せると、黒塗りの車は音も振動もなくなめらかに動き出した。