◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
しんと静かな車内は、俗世を離れた上流階級の空間という感じだった。緊張が高まっていくのを感じる。――すると、どこからともなく流れ出すクラシック音楽。エーゼルワーイズ、エーゼルワーイズ……♪ 無音よりはいくらか気が紛れたけど、FMラジオとかがちゃがちゃした音が恋しい。
……行先、チェーン店の居酒屋だけど、いいのかな……。
こういう世界の人達って、普段どんなお店行くんだろう。ビッグサイトの近くでできるだけ安くお酒がのめるところをいつも予約してもらっていて助かっていたけど、もしも「これはのめません。汚水でしょうか?」とか言われたりしたら、みんなにも申し訳ない。だんだん不安になってきた。
そんな心配をよそに、飲み屋にはすぐについてしまった。
心地よい音楽に、心地よい室内温度に浸っているうちになんだかもう少しだけこのまま乗っていたい気持ちになっていたけど、あわてて頭を切り替える。うっかり財布を出しかけて、タクシーじゃないんだったと思い直し、しまう。