◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

「それでは、行ってらっしゃいませ」

 またもや丁寧に扉を開けてくれる運転手さんにお礼を言って、愛里はキャリーバッグを曳き曳き、打ち上げ場所を確認する。尚貴の後ろからは当然のように郡山もついてきていた。

「エリンギ! こっちこっち!」

 その声に愛里が顔を向けると、店の出口付近で見知った顔が手招きしてくれていた。切り揃えたショートヘアに最低限の化粧を施した小ざっぱりした顔立ち、大荷物をどっこいしょと店内に運び入れている最中だったようだ。

「あー! はなやんありがとう!」

 エリンギとは愛里のペンネームで、はなやんは彼女のペンネーム。本名はお互い知らない。でもSNS上で毎日顔を合わせている関係で、仲良しだと断言できる。
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