◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

愛里とはなやんの視線を受け尚貴は、

「あっ、はい……あ、えっと」

 その時、入り口ドアが開き、もう一人スーツの男が入ってきた。そして郡山の傍に近寄っていくと何やら話しかけ、郡山が腕時計を確認している。交替の時間なのだろうか。

「やっぱ、気になります?」

「「えっ」」

 尚貴に指摘され、はなやんとハモった。

 いつの間にかスーツの彼らを凝視してしまっていた。
 尚貴が何かをしゃべっていたのに、ろくに聞いていなかったことに気付いて焦る。

 尚貴は、

「正直、ちょっと気まずいですよね、はは」

 そう言って自分から切り出した。「今しかない」とはなやんと目配せをし、

「いや~、そうですね! でもさ、めっちゃすごくない!?」
「すごいすごい! えっ、何、そういうアレなの!?」

 覚悟を決めたものの、いったいどう触れていいのかはまるでわからない。
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