◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

 ベルトコンベアーの前の椅子に座って作業できるし、仕事自体は単調で、大きな重圧もなければ変化も求められない。そういう意味では気楽だが、つまらないことを繰り返さないといけないという意味ではあまり楽ではなかった。

 いつもは勤務時間の七時間を使って、頭の中で物語を細部まで考える。物語が上手くまとまった日は、有意義に過ごせたと満足して帰宅できる。夢追い人としては、ごく当然の努力だと思っていた。

 けれど、今日はどうしてもそういう気分になれなかった。

 午前中だけでも小さなミスを連発し、ベルトコンベアーを何度も止めさせてしまった。締切間際で寝不足な時でももう少しまともにやれるのだけど。
< 98 / 295 >

この作品をシェア

pagetop