上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
「パーキング寄りたくなったら言えよ」
隣で泣いてる私は頷くことしかできずに、ただひたすら前を見て焦る気持ちを抑えることしかできなかった。
病院に着くまでの間、結城課長は時々手を強く握りしめては「大丈夫だ」と励ましてくれていた。
東京を出て3時間ちょっとで総合病院に着いた。私は車を降りて急いで待ち合いの場所へ向かうと椅子に座っていた涼太が駆け寄る私に気づいて立ち上がった。
「涼太! お母さんは?」
「まだ手術中だ。亜子…………一応覚悟しておけ」
思ってもない涼太の言葉が何度も頭の中でリピートする。
「…………イヤ」
「亜子……オフクロも頑張ってるんだ……だけどどうしようもないこともあるんだ」
いつも強気で弱音を吐くなんて聞いたことのない涼太が俯いて弱っているように見えた。
それはまるでパパやママが亡くなった時の私そのものに見えてあの時の思いが溢れそうになる。
目に涙を溜めて憔悴しきっているお父さんの姿を見て私は止めていた感情が爆発するのが分かった。
「どうして‼︎ そんなの絶対ヤダッ‼︎ 涼太どうしてそんなこと言うの‼︎ お母さんがいなくなるなんてそんなの……そんなの絶対イヤッ‼︎」
泣きながら取り乱す私の肩を涼太が掴む。
「亜子……落ち着け」
涼太の悲しい声が私を子供時代へと引き戻し、自分でも何を言っているのか分からなくなっていた。
「どうして…………大丈夫だって言ってよ……お母さん……お願い…………いなくなるなんてイヤ…………パパ……ママ私を残して逝かないで………………側にいて……」
涼太に抱えられたまま私は気を失ってしまった。