上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
気づく想い 〜尊side2〜
玄関のドアを開けてネクタイを緩めながらリビングの電気を付けると、冷蔵庫から取り出した缶ビールを飲みながらそのままソファーに座る。
取り引き先との飲み会からようやく解放されて帰って来たはいいが時刻はすでに日にちが変わっている。
相手と飲む事も仕事として大切なのは分かるが、こう多いとロクに仕事が進まない。
最近は予定がない日に溜まった仕事を一気に片付けるというやり方をしてる為、平均して毎日帰りがこの時間だ。
ついこの間まではそれで問題ないと思っていたが、最近はなるべく時間を空けるべく努力している。
亜子と会う時間がもっと欲しい。
あの日、両親と会ったあとに連れて行った桜並木を見て突然泣き出した亜子を、ただ何もできず側にいてやることしかできなかった自分に無性に腹が立った。
俺はあの日から亜子が気になって仕方がなくなった。
あんな風に泣いて何でもないと言って笑うなんて、そんなわけないだろう!
だけど俺たちはお互いのことを何一つ知らない。
今更だが、亜子からプライベートな話を一度も聞いたことがないと気づいた。
今まで付き合ってきた女たちは自分の事を全てさらけ出しアピールしてた。
亜子はそいつらと真逆の態度だ。
まるで知られたくないかのように何も話さない。
知りたい……。
辛い事があるなら守ってやりたい。
俺の中で亜子に対しての感情が変わった瞬間だった。