上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
どんな子と聞かれても俺が知りたいくらいだ。多分俺は同僚の長谷川より亜子のことを知らないのだろう。
そう思うと長谷川に対して妙な敵対心が込み上がる。
「なぁ、尊ほどのイケメンが可愛い子も手に入れて何をそんなに悩んでるんだ?」
「……そうだな。俺にもよくわからねぇ」
照れもあって素っ気なく答えたが自分でもよく分からない。
「じゃあ、尊はその子のどこが好きなわけ?」
「……なんとなく」
俺の言葉を聞いて智史は笑い始めた。
「おい! 笑うくらいなら聞くなよ!」
「ごめんごめん、あの尊を振り回す子が現れるなんてな。だいたい尊は女性に対して言葉が足りなすぎなんだよ。好きになった相手くらい言葉で伝えてあげないとな!」
「それお前に言われたくない」
前を向いて手にしたビールを一気に飲み干す。ああは言ったが智史の言う通り言葉で伝えなければ伝わらないこともある。
智史には言えないが真奈美とはもちろん体の関係はないにしてもつい最近まで気持ちはあった。
正直に話したら軽蔑するか?
だが、それでも亜子には俺を知ってほしい気持ちがある。
空になったグラスを見つめながらいつのまにか俺の心は亜子だけになっている事に気づいた。
まずは話さないとな。
結局そのあとも智史のしつこい尋問は深夜まで続き俺たちはひさしぶりに朝まで飲み明かした。