上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※

残りのコーヒーを一気に飲み干しオフィスに戻ろうとする俺に桐生は話を続けた。

「最近よく下で見かける女性は結城課長の何ですか?」

「は? 何のことだ?」

下で見かける女性とは誰のことだ?
桐生が何を言ってるのか一瞬分からなかったがそれが真奈美のことだとすぐに気づいた。

「藤井と付き合っといてどういうつもりですか?」

なぜ桐生が知っている?
亜子がバレたくないと言ってる限り俺が何か言うべきじゃない。
知らないと言ってやり過ごすか?

「藤井も知ってますよ。あいつは何も言わずこのまま自分の中で消化するつもりだろうけど、それじゃあ可哀想だろ!」

「ずいぶん藤井の事知ってるんだな」

桐生の挑発につい乗りそうになる。

「好きでしたから、藤井のこと。結城課長と付き合うずっと前の話ですけどね。今は大切な友人としてですけど、藤井のことあまり傷つけないでください。あいつはああ見えて弱いやつなんです」

「……あぁ、分かってる。たまに来る女性ってのは俺の親友の彼女だ。訳あって相談に乗ってたんだが桐生の思ってるような関係じゃない」

「そうなんですか。生意気なこと言ってすみません。藤井にちゃんと話してやって下さい。じゃあ俺はこれで失礼します」

桐生は頭を下げて入り口まで行ったところで立ち止まり振り返った。

「知ってると思いますけど、藤井のこと狙ってるやつ多いですよ」

俺は帰って行く桐生の姿を見続けていた。

冷静に応えたつもりだが内心はどうしようもない嫉妬でおかしくなりそうだった。

俺よりも桐生の方がずっと亜子のことを知っている。
イラつく気持ちを抑える為に顔を上に向けて大きく息を吐く。

まずは話をする時間を作らないとだな。
コーヒーの効果かアルコールも抜け始め残ってる仕事に手をつけるべく俺はオフィスに向かった。

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