上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※



「無理に起こして悪かったな」

マンションの下で待ってた智史を部屋にあげ淹れたてのコーヒーを渡した後、今頃になってラインの確認をすると、たしかに今日ここに来るとメッセージが入っていた。

「まぁそろそろ起きようと思ってた頃だしな」

そう言ってリビングのサイドボードにある時計に目をやると時刻はすでに昼の1時を過ぎていた。
智史の電話がなかったら今頃まだ寝てたな。

「それで、何かあったのか?」

L字型ソファーに座る智史は先日飲みに行った時とは違って真剣な顔をしている。
こういう時の智史の話はあまり良い内容ではないと長い付き合いの中で分かることだ。

「実は事業拡大の為にアメリカに行くことになったんだ」

「アメリカ⁉︎ いつから?」

「来月。誰が行くかで揉めてたんだが俺が行くことにしたんだ」

真っ直ぐな目をして話す智史はそれ相当の覚悟を決めてきたのだろう。

「来月とはまた急だな」

「あぁ、つい最近決まったんだ。 最短でも3年はかかると思う……真奈美には明日話すつもりなんだ。連れては行けない」


智史は真奈美の話になると目線を足元に落とし大きく息を吐いた。

「向こうで成果を出せば真奈美との結婚も認めてくれるだろう。だが確証もないなかであと3年も待っててくれとは言えない」

国内屈指の最大手企業である社長の息子というのは、俺なんかが想像できないほど背負う何かがあるのだろう。
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