上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※

智史の言ってる事が分かるだけに言葉が見つからず俺はただ黙って話を聞いていた。

「ほとぼりが冷めるまで真奈美の事を頼む。勝手な事を言って悪いが尊にしか頼めないんだ」

「……あぁ、分かった」

智史はそれだけ話したあと仕事の引き継ぎや準備があるからと言って帰って行った。

そんなに大切なら連れて行けばいいだろうと思うが、それを選ばないのは真奈美の為を思ってのことだろう。
智史の会社ほどの事業拡大となれば、しばらくは家に帰るのも日付が変わってからになるだろうし泊まり込みも当たり前にあるはずだ。
智史の真剣な願いにおれは断ることができなかった。



ソファーに座ったまま背もたれに寄りかかり手元にある携帯を覗いて小さく息を吐いた。
相変わらず亜子からは何も連絡がなく少しずつ妙な不安にかられる。

一体俺はいつから女なんかに振り回されるようになったんだ?
恋愛に一喜一憂するなんてそんなガラじゃねえし、そういう男が一番嫌いだったはずだ。

今は亜子の笑う顔が見たいと思ったり周りにいる男たちに激しい嫉妬を抱いたりと俺の感情は日々騒がくなる一方だ。


それに亜子に対して向き合うことで分かったことがある。それは亜子も俺に向き合っていなかったということだ。

俺たちは今まで偽物の恋人を演じてたことになる。
半年も付き合ってきて何やってたんだ。
だが、俺は本気になった。
それに俺には亜子を本気で惚れさせる自信がある。

お互いをもっと知るべきなんだ。
もっと話し合わなければ何も始まらない。


結局その日は亜子から一度も連絡が来る事はなかったが、かえってそれが俺の心に火をつけた事は言うまでもない。


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