上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
目が覚めると部屋の中は真っ暗でまだ夜だとわかった。
体を起こしベット脇にあるライトを付けて床に散らばった下着と服を着直す。
ボサボサの髪を手ぐしでまとめて寝室を出ると、リビングで電話をしている結城課長の後ろ姿が見えた。
携帯を耳に当てたまま振り返った結城課長は私を一瞬見てすぐに視線をそらし背中を向ける。
あぁ、そういうことね……。
理解した私はなるべく音をたてずに帰り支度をはじめた。
結城課長はそんな私を横目に電話相手と会話を続ける。
「いや、無理だろ」とか「無茶言うな」って、口調はキツいのに額に手を当てて辛そうな表情をしてる姿はまるで裏腹だ。
それに……。
「大丈夫だよ」
時折聞こえる優しい声音は電話の相手が誰なのか知らなくても結城課長の大切な人だということはわかる。
支度を終えた私は結城課長に “ 帰ります ”のジェスチャーをして玄関に向かう。
「おいっ!」
足早にやってきた結城課長は少し焦った顔をしながら私の右肩をグッと掴む。
なんとなく今は話たくない。
「明日早いの忘れてました。 今日は帰りますね」
なんとも言えないこの気持ちを知られたくなくて私は笑顔をつくる。
私の右肩を掴んでいた手はゆっくりと離れ
「タクシー手配しておく」
そう言ってリビングへ戻ったかと思うとコートを羽織りタクシーが来るまで一緒にエントランスで待っててくれた。