上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
どこかで考えなきゃいけないことだとは分かっていたけど考えないようにしていたことだった。
「まだここにいようと思ってるの」
どこか後ろめたい気持ちがあって俯いてしまう。
「正直に言うとね、私たちは亜子がいてくれたらとっても嬉しいの。でも亜子がここにいることで会社の人に迷惑をかけているんじゃない?」
「……うん。そうだよね」
自分の部屋に戻りベットの上に座ってため息をつく。
私はどうしたいのだろう。
今の会社を辞めるなんて考えたことなかった。でも、お母さんが倒れた時すごく怖くて、離れて暮らすなんて考えられなくなっていた。
私が側にいればお母さんが具合が悪くなってもすぐに分かってあげられる。
あれだけ仕事が好きだったのに今はその熱意もなくなってきている。
このままここにいた方がいいのしれない……。
全く考えてなかったわけじゃない。
でもそのことを考えるとどうしても結城課長のことが頭に出てきてしまう……。
初めて本気で好きになった人。
だけど私には2度と失いたくない家族がいる。
本当は心のどこかで決めていたんだ。
気がつくと頬に涙が伝っていた。
次の日、仕事中の涼太に話があると言って会いに行った。
「本当にそれでいいのか?」
「……もう決めたことだから」
「余計なお世話かもしれないけど、上司とのことはどうするんだ?」
「ちゃんと終わりにしてくる」
涼太はしばらく沈黙した後「分かった」と言って私の我が儘を聞いてくれた。