上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※

翌朝、仕事の時と同じ時間に起きてお母さんと朝食の準備をしていると、涼太がリビングへやってきた。
いつもならあと1時間は寝ているというのに早起きなんて珍しい。


CHAINON(シェノン)は販売店は平日休みだけれど、事務所や製作所は基本土日がお休みである。

「亜子、悪いが今日どうしても行って欲しいところがあるんだ」

「え? 仕事か何か?」

涼太から仕事のことでお願いされるなんて滅多にないことだ。

「新しくできるホテルのインテリアを任されてて先方がデザインの話をしたいと言ってるんだ」

「えっ! 私じゃ無理だよ。ホテルのインテリアなんてデザインしたことないし」

「あぁ、分かってる。だが先方は亜子のデザインを見て気に入ってくれたんだ。俺も一緒に行くつもりだったんだが急用が出来て行けそうもない」

そんなの無理!
だってまだ仕事始めて半年なのに。

「お父さんかお母さんじゃ駄目なの?」

「今日はお父さんと出かけなきゃ行けないところがあるのよ」

気弱な声を出す私とは違ってニコニコしながらお母さんが言う。

「そんなぁ……私1人じゃ無理だって。それに今日は美容室行こうと思ったのに」

「悪い悪い。礼はあとでするからさ、頼むよ」

涼太は顔の前で両手を合わせてニッと笑って見せる。
もうっ!どうなっても知らないから!

「で、どこ行けばいいの? お店?」

「軽井沢」

「え⁉︎ 軽井沢!」

びっくりして思わず声が裏返ってしまった。

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