上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
タクシーに乗ってぼんやりと窓の景色を眺めながら私は水野先輩の言葉を思い出していた。
新卒で入社した私は1年間新人研修でいろんな部署をまわり2年後から正式に部署が決まるシステムなのだ。
様々な仕事内容を経験させることで一人一人の能力を活かせる場所に配属させてもらえる為、今時にしては離職率も少ないほうなのだと思う。
水野先輩は私が配属された部署にいて教育係として指導してくれた。
面倒見がよくて優しい先輩のことが大好きで今でも姉のように慕っているが、先日赤ちゃんが生まれて今は育休中である。
2年前、水野先輩の結婚が決まった時、結婚したらなかなか出れなくなるからと仕事帰り2人で飲みに行ったことがあった。
アルコールが入ったせいか水野先輩は昔結城課長を好きだった時期があり告白した過去を話し始めた。
もともと2人は同期同士で仲も良く、結城課長が一社員だった頃は1日1回は水野先輩のとこに来て話す姿を目にしていた。
手応えを感じて結城課長に告白したものの結果は惨敗で
「友人としてしか見れないってバッサリ切り捨てられたわ〜」
あははーと笑いながら水野先輩は当時のことを懐かしむように話す。その頃の2人は誰が見てもいい雰囲気で、私もてっきり両思いなんだと思っていたから過去の話だとしても衝撃的だったのを覚えてる。
「ここだけの話なんだけどさぁ……」
水野先輩は左手で頬杖をつきながら続ける。
「結城はずっと想ってる人がいるんだって。
その人には昔から付き合ってる彼がいて自分がその中に入れる余地はないんだけど、それでも好きだからいいんだって」
なんて言ったらいいのかわからず私はただじっと聞いてるだけだった。
水野先輩は「あんなイイ男なのにバカよね〜」とビールを飲みながら私に “ ここだけの話だからね! ” と唇の前に人差し指を立ててニコッと笑った。