上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
「尊くん住む場所決まったら広さ教えて。亜子、俺と親父で新しい家具作ってやるよ!」
「それいいわね! お母さんも楽しみだわ!」
「え? どういう意味?」
やっと理解できてきたところなのに涼太達はまた意味の分からないことを言ってくる。
「尊くんのところに行くだろ? 遠距離は良くないぞ」
涼太の言葉を聞いて安心したはずの胸が違う音を立てた。
尊さんとよりを戻すということは、いつか東京へ行くことなんだ。
「尊くん新しく住む場所はだいたい決めてるの?」
「いえ、亜子と一緒に決めたいと思ってるのでまだ決めてないです」
「じゃあ、次の休みにでも見てきたらいいわ!」
私の気持ちが付いていかないうちに話がどんどん進んでいく。
「待って! 私、私東京へは行かない! だってそしたら……」
お母さんの側にいられない。
また倒れた時に誰か側にいなかったらどうなるの?
尊さんのことは好きだけど……側にいたいと思うけど今はできない……。
「尊さん……私」
「亜子」
尊さんに話しかける私をお母さんが途中で呼び止める。
「亜子。私のことが心配なんでしょ? 私なら大丈夫よ、定期的に病院も行っているし亜子がいなくなったら心配症のお父さんが30分おきに電話するって言ってるから。ね、お父さん」
「まぁ、亜子の為ならしかたないな」
携帯はあるけれどほとんど使わないお父さんは苦笑いしながら頷いた。
「だからね、好きな人の側に行きなさい。亜子が幸せであることが私たちの幸せなのよ。時々顔を見せに来てくれればそれでいいの」
私の両手を握って優しく話しかけるお母さんを見て抑えていた涙が一気に溢れ出してくる。