上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
離れている間、尊さんとは頻繁に電話で話をするようになった。
尊さんは「いつでもかけてこい」と言うけれど、仕事中では迷惑だろうし何時に仕事が終わるのかも分からないから、私からすることはなくていつも尊さんの方から電話が来るのを待っている。
『そういえば今日チェスト届いたよ』
『そうみたいですね、なんだかギリギリになってすみません』
『いや、ちょうど俺も時間が取れたからよかったよ。それにしても良い木材使ってるな。親父が俺も頼み込むって言ってた』
『お父さん、久しぶりに作ってすごく楽しかったみたいだから頼めば作ってくれると思いますよ』
後で知った事だけど私のお父さんと尊さんのお父さんは大学時代からの友人でお互い経済学を学んでいた仲だったそう。
尊さんの実家にあったキャビネットは、作り手として最後にお父さんが友人である尊さんのお父さんに送ったものだった。
「世間て狭い……」
そのことを知った時に思わず私が口にした言葉を尊さんはため息混じりにこう言った。
「お前さぁ、もっと別の言い方ないのかよ」
「だってこんな偶然ってあります?」
尊さんの言葉に私も負けずと食らいつく。
別の土地で育って世の中たくさんの人がいる中でこんな出会い方するなんて、これを偶然と言わないなら何と言えばいいの?
「偶然じゃなくて必然だったんだよ。俺たちはこうなる運命だった」
この時の尊さんの言葉はきっと一生忘れないと思う。
うん、偶然じゃなくて必然だった。
きっと、そう。