上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
『じゃあ、明日な。準備しとけよ』
『はい、待ってますね』
電話を切った後、私は眠りについた。
翌朝お昼前に尊さんが迎えに来てくれた。
今日でまたこの家を出て行く私。
でも以前とは違って気持ちは穏やかだ。
「亜子、体に気をつけてね」
「それはお母さんでしょ! お父さん、涼太お母さんをよろしくね」
「おう! 任せろ! 親父泣くなよ。亜子が困るだろ」
笑顔で見送ってくれるお母さんと涼太とは反対にお父さんは涙目になっている。
「亜子、たまには帰って来てくれよ。世の中の娘を持ってる父親ってのはこんな気持ちになるもんなんだな。涼太、お前も里子さんを大切にしなきゃ駄目だぞ」
「はいはい、分かったから涙拭けよ」
話の矛先が自分に向かうと適当な返事をして受け流す涼太を見て私たちは笑っていた。
家族に見送られて私たちは新しい住まいに向かった。
私も何度か東京へ足を運び2人で決めたマンション。
玄関を開けて中へ入るとお父さんと涼太が作ってくれた家具が至る所に置いてある。
まだ新しい木の匂いがする。
2人で住むには広すぎるくらいだけど、選ぶ時に尊さんが持ってきたいくつかの物件は、どれもこれ以上の広さと家賃の高さで驚きの連続だった。
その中でも一番安い賃貸のマンションを選ぶと尊さんは「亜子の気に入ったとこでいいよ」と私を甘やかそうとする。
桁が違いすぎて内心家賃で選んだところもあるけど、このマンションは木のインテリアがとても合う内装でできていて見学で入った時一瞬で気に入った場所でもあった。