上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※

超高層のいわゆるタワーマンションと呼ばれるこの場所は、最上階ではないものの窓の外をのぞけばかなりの高さがある。

高所恐怖症ではないけれど近年災害が多いことを思うと少し怖い気がしてならない。

「地震がきたらどうしよう」

思わず不安を口にする。

「その時は守ってやるよ」

後ろからそっと抱きしめられた。

「いや、違うな。どんな時もずっと守るよ。だから亜子も俺の側にいて支えてくれ」

「はい」

尊さんの腕の中で向きを変えて返事をした。
抱きしめる腕を離さずに尊さんはそのまま私首元に顔を埋めて呟いた。

「なぁ、いい加減敬語やめれば。俺はもう結城課長じゃねーし」

「でも、これから尊さんと同じ会社に入ればまた上司ですよね?」

「そんなの会社にいる時だけでいいだろ。2人でいる時は敬語禁止! でないとその都度キスするからな!」

「ちょっとそんなこと急に決めないでください!」

尊さんが私の唇を塞ぐよう口づける。
荒々しいキスは困るけどこんな風に優しいキスなら嫌じゃない……。

「敬語禁止な。じゃないとまたするぞ」

「……嫌じゃないです」

「は?」

「キスは嫌じゃない……」

勇気を出して素直に言ってみる……。
だけど尊さんは思っていた反応と違って頭の上でため息が聞こえた。

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