上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
ここも通い始めて3ヶ月が経とうとしている。
店内に入り藤井社長について行くと、奥の席に60代前後の夫婦がこちらを向いて座っていた。
「結城さん、今日は私の両親も一緒によろしいですか?」
「え? あ、はい」
よく考えたら藤井社長とは何度も話しているが、亜子の両親とは挨拶すらしていなかったことに気づく。
「挨拶が遅れて申し訳ありません。亜子さんの上司の結城と申します。それから……」
「私たちの前で堅苦しいことはいらないよ。あなたの話は息子から聞いてます」
俺の言葉を遮るように話し出した亜子の父親は、俺の立場もここに来る理由も全て知っていた。
「まずは仕事の話をしようか。君はどう思う?うちのインテリアがホテルに必要だと思うかい?」
亜子の父親はいきなり核心をついてきた。
考えてなかった訳ではないが、まさか亜子の両親と会えるとは思っていなかった。
しかも父親は会長で母親はデザイナーとなれば下手なことは言えない……。
「……正直そうは思いませんでした。たしかに拘りは必要だと思いますが多少は妥協も必要だと思ってました」
俺の言葉に亜子の両親は真剣に耳を傾けている。たしかにそう思ってた。インテリアなんてオーダーに拘るなら、それをしてくれる所に頼めばいいと思っていた。
だが、毎週CHAINON(シェノン)に通い始めてる内に、実物や写真を見ることで親父が拘る理由が分かったような気がした。