上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
「フローリングとカーペットのカラーを聞いてやっぱりモスグリーンがいいかなって。あ、あとここは少し変えて赤み寄りのオレンジの方がしっくりくるように思いました」
1年後にできるリゾートホテル縁の7軒目となるインテリアのデザイン、製作を亜子とCHAINON(シェノン)が担当している。
「たしかに、こうやって見るとそれぞれの相性も良さそうだな。よし、すぐ会議にかけてみるよ! たぶんそのまま通ると思う」
「ありがとうございます! あ、あとで三木くんにもお礼言わなきゃ」
亜子の口から聞き捨てならない男の名前が聞こえた。
「三木くん?」
「はい。CHAINON(シェノン)のデザイナーです。 少しの間でしたけど一緒にお母さんから学んでいた仲なんです。私と違ってとても繊細なデザインを作る子で色の組み合わせにとても詳しいんです!」
知ってるさ。
毎週長野に通って仕事する亜子を遠くから見ていたんだ。
三木ってあの短髪でメガネ男のことだろ?
いつも亜子の近くに座って笑ってるのを見て気に入らなかった。
まぁ、それも今となってはもう関係ないことだな。
ん?いや、ちょっと待て。
「亜子、三木くんと連絡取ってるのか?」
「え? はい、メールだと細かい箇所がどうしても分からなくて。それに電話の方が早いですし」
笑って答える亜子とは反対に、俺の胸の奥はドス黒い靄が塊となって渦巻いていくのを感じる。