上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
大切な人のために 〜亜子side〜
ピピピ……ピピピ……ピピピ……
頭の上からアラームの音が聞こえる。
「おはよう」
目の前で私を見つめる尊さんは、優しく笑ってる。
「……おはようございます」
毎日のことなのに、この光景がなかなか慣れずどうしても照れてしまう。
朝食の準備をする為にアラームを早めにセットしているのに尊さんはそれよりもずっと早く起きているみたい。
「どうかしました?」
じっと私のことを見つめる尊さんの顔が近すぎて耐えられずに聞いてみる。
「いや、なにもないよ」
「……私の顔変でした?」
子供の頃、涼太に「亜子、目開けて寝てたよ」って言われてからかわれたことがあった……。まさか、大丈夫だよね?
「ん? 変じゃないよ。可愛かった」
「はあ?」
「毎日亜子の寝顔見れて幸せだなって思ってただけ」
一緒に暮らすようになってからというもの尊さんは朝から甘い言葉を恥ずかしげもなく言ってくる。
そして必ずキスをする。
東京に戻ってから私を取り巻く環境はいちじるしく変わっていった。
長年頑なに断っていた私のお父さんも “リゾートホテル縁” と提携し、CHAINON(シェノン)はインテリア全般のデザインや製造を受け持つことになった。
私は尊さんの婚約者兼デザイン担当として義父さんの会社に入り、離れてはいるけれどCHAINON(シェノン)とは常に一緒に仕事をすることができている。
家族の元から離れる私のことを思って尊さんとお父さんたちが決めたことだったと後で知った。