上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※


「お待たせいたしました。そろそろお時間ですのでご案内いたします」

進行役のスタッフさんに呼ばれて私は教会の入り口ドアの前へ向かう。

ドアの前には別のスタッフさんがティッシュボックスを持ってお父さんと立っている。
どうやら既に泣いていたお父さん。
目も鼻の頭も真っ赤になってスタッフさんは苦笑いだ。

「まもなくですのでご準備お願いいたします」

私は右手をお父さんの腕に沿え用意していたブーケを左手に持つ。
それから顔をそっとお父さんに向けて口を開く。



「私お父さんの子どもで良かった。ありがとう」


どうしても言いたかったこと。
ちゃんと伝えられて良かった。
お父さんは、うんうんと何度も頷き泣くのを必死に堪えてる。


「扉が開きます」


スタッフさんの声で目の前の大きな扉が開くと窓から入るたくさんの光が眩しいくらい。

お父さんと歩くバージンロード。

席にいる雅や恵菜ちゃんは泣いていて桐生は笑顔を向けてくれている。その隣を見ると智史さんと一緒にいる真奈美さんも泣いていた。

横にいるお父さんは顔をくしゃくしゃにして泣くのを我慢していてそれを見たお母さんと涼太は呆れたように笑ってる。


尊さんは優しい顔をして私を迎えてくれた。


神父さんの合図で尊さんにベールアップをしてもらい誓いのキスをする。


唇が離れゆっくり目を開けると尊さんはそのまま私の耳元にそっと近づいて囁いた。




「亜子、幸せにする。必ず」




私を見つめる尊さんの優しい瞳。


大切な人。


私は“ はい ”の代わりにとびきりの笑顔で応えた。




[番外編〕 完
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