上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
ただ、自分でも意外だったのは俺は藤井を好きになりかけているという事だ。がしかし、心の底にはまだ他に好きな奴がいる。
「サイテーだな」
思わず出た言葉。
本当サイテーだ。
このままでいいわけがない。
だが、待ち合わせ場所にやってきた藤井を見つけると一刻も早く触れてしまいたくなる。
そんな気持ちを知られないようにしようとすればするほど無愛想になってしまう。
飯を食べ終えマンションに帰ってからは箍が外れたように藤井を求めた。
藤井は時折辛そうでその顔を見るたびハッと我にかえり力を緩めるが俺を見て欲しくて自然と名前で呼びながら抱きしめる力は更に強くなる。
結局、藤井が気を失うまで抱き潰してしまい後悔の念を抱きながら自分の胸の中に閉じ込めるように抱きしめた。
しばらくするとリビングに置いてある携帯が鳴っているのがわかった。
時刻を確認すると23時。眠っている藤井から離れるのを躊躇したが昨日まで行っていた大阪支店からかもしれない。
新しい部署を立ち上げると上の者は暫く帰るのが日をまたぐのはよくあることだ。この時間に電話が来るのもありえる。
藤井を起こさないようにそっとベッドから降りてリビングに向かう。
しかし電話の相手は矢野真奈美(やの まなみ)。俺がずっと忘れられないでいる相手からだった。
真奈美からは時々こんな感じでいきなり電話がくる。
話の内容と言えば俺の親友で真奈美と付き合っている野田智史(のだ さとし)のことである。
結婚の話が上手く進まず夜1人になると不安になって泣きながら俺に電話してくる。