上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※



桜の木々が一斉に揺れ、風で飛ばされた花びらが桜吹雪となって辺り一面に舞っていく。


尊さんから目を離して思わず上を見上げると目の前でクルクル舞う花びらを見ているうちに遠い記憶が蘇る。



幼い頃パパとママとお花見に来ていた時の記憶。
隣にはお父さんとお母さん、それに涼太も一緒にいる。


毎年行ったんだと聞かされていたけど、私の記憶のパパとママとは今でも最後に行った日のことを思い出せないでいる。



パパとママがいなくなってから私は桜の花が嫌いだった。



桜の花が咲く頃はいつも周りが楽しそうで明るく見えて自分だけが暗くなっていくのがわかって春も嫌いだった。


何度も心の中でどうして私だけを1人にしたのってパパとママを責めたりもした。


そんな私を心配してある時お母さんが「花見に行こう」と言ってきたんだっけ。




「パパとママが大好きだった場所だからゆっくりでいいから亜子も好きになろう」




…………ずっと忘れてた。

お母さんの言葉が胸に突き刺さる。


いつから捻くれてしまったんだろう。
藤井家のみんなはいつでも私を受け入れてくれた。


お母さんはずっと私の味方だった。
本当はみんなの事が大好きなのに…………。


目の前で桜の花びらは何重にも重なってユラユラと舞っているように見える。
左頬に温かいぬくもりを感じて見上げていた視線下ろすと初めて泣いていることに気づいた。


左頬に触れてる尊さんの掌。



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