上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
「温かい…………」
尊さんは涙が溢れて止まらない私を何も聞かずにそっと抱きしめてくれていた。
気づけば尊さんのシャツは私の涙と落ちた化粧で汚れてしまっていた。
公衆の前で勝手に泣いてしかも服まで汚してしまうなんて最悪だ……。
私は帰りの車の中で何度も謝ったけど気にするなと言って笑ってくれた。
結局夕食もごちそうになってしまった。
今日は自宅に帰りたいと言った私に少し考えてから「わかった」と言って送ってくれた。
自宅マンションの前で車を止めてもらってから私は尊さんの方を見てお礼を言った。
「今日はありがとうございました。 あの、それと色々すみませんでした」
車のドアに手を掛けた時反対の手を尊さんに掴まれた。
尊さんは私にそっとキスをして心配そうな顔をして聞いてきた。
「大丈夫か?」
尊さんの言いたいことはわかる。
「大丈夫です。 昔のこと思い出しちゃったってだけで別に悲しくて泣いたわけじゃないんです」
心配しないようにわざと明るく振る舞った私を見て、大丈夫だと思ったのか何も言わず掴んでいた手を放してくれた。
尊さんと別れ部屋に帰ってから服も着替えずに真っ暗な寝室のベットへ倒れこんだ。
体を横にしたまま目を閉じると今日あった色々な出来事が頭を巡る。
「泣いちゃうとか、めんどくさい女って思ったかな……」