上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
「あんた達、 ずいぶんひさしぶりだね〜」
ここ最近は本当に忙しくて3人で来れたのはもう半年以上前になる。
ここのお店は60代の夫婦とバイトさんが2人いて、無口なおじちゃんは調理担当でほとんど出てこないけどおばちゃんの笑顔と人柄でリピーターさんが多い。
大きめの長方形のテーブルに雅と隣同士で座り私の向かい側に桐生が座って注文もその場で頼んじゃうのがいつものパターン。
ビールと料理が次々と運ばれてくる中、ついさっき見た尊さんと女性のことを忘れたくて私はビールをグッと体の中に流し込む。
はじめは仕事の話で盛り上がっていたのに途中から程よく酔い始めた雅と桐生が恋愛話について熱く語りはじめた。
2人の話しを聞きながら、ふと気が緩むと尊さんのことが頭に浮かんで離れない。
お酒は強い方ではないけれどそれなりに飲んでいるのに今日に限ってなかなか酔えないでいる。
「それにしてもさっきの結城課長のあれなんだと思う?」
2人で滔々と語り合ってるなかまだ素面に近い私を見て桐生は唐突に聞いてきた。
「桐生って上司の恋愛とか気にするタイプだったったけ?」
雅がさり気なく話をそらそうとするが桐生はわざと無視するように続ける。
「なんか訳ありっぽかったよな?」
「そお? 道聞かれてただけかもしれないじゃん」
雅の言葉にそうだったらいいな。と思いながらも私の胸の奥は黒い靄がかかっているのがわかる。