上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
「藤井、結城課長と付き合ってるのか?」
桐生の真っ直ぐな瞳に嘘はつけない。
私は小さく頷いた。
「亜子…… ごめんね。 私が余計なこと喋っちゃったから……」
「ううん、 雅は悪くないよ」
そう言って私は視線を雅から桐生へ戻した。
「藤井が幸せなら何も言うことはないんだ。
でもさ、 ここ最近の藤井はなんて言うか辛そうに見えたからさ。 何かあるなら話せよ」
こんな時に優しい言葉なんか言わないでよ。
私はテーブルの下にある両手をグッと握りしめ、泣きそうな気持ちを抑えて今までのことを話し始めた。
ただ1つ、 私が尊さんと付き合うと決めた本当の理由だけは言えなかった。
言うべきかもと思ったけど、 それを話したら私の家族のことまで話さないといけなくなるのだ。
尊さんに忘れられない人がいるのを知ってたから付き合った……なんて、 そこまで話す気力がなかったのもあったけど自分勝手な考えすぎてこれ以上誰かに軽蔑されるのが怖かったんだと思う。
「しかし、 あの課長が人の目も気にせずにキスとはね〜」
一部始終話し終えた後、頬杖ついて聞いていた雅が目を丸くして驚いている。
「ねぇ! どういういきさつでそうなったのかもっと詳しく教えなさいよ!」
昨日あった出来事も泣いたこと以外は話したんだけど、雅は全然納得行かない様子で桐生がいるのもおかまなく赤裸々に聞いてくるから恥ずかしすぎて私の顔は真っ赤になってる。