上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
どうにかして話を変えようと違う事を考えていたら部屋の外からコンコンとノックする音が聞こえた。
声をかける間もなく戸が開くとそこには意外な人物が立っていて、桐生の隣の席へ向かって歩きながら話し始めた。
「長谷川先輩、車の中でキスした事なら私も見たからわかりますよ!」
「恵菜ちゃん?」
いきなりの登場で私と雅の声が重なる。
「 あ、一応ノックはしたんですよ。 でも賢人くんと長谷川先輩の言い争ってる声で入るタイミングなくしちゃったんです」
……てことはどこまで聞いてたんだろう?
でも待って、尊さんと私のキ、キスを見たって言ってたよね?
あれ?
恵菜ちゃん、今桐生のこと名前で呼んでなかった?
「ちょ、 ちょっと待って! いったん落ち着こう」
雅は目の前にいる桐生と恵菜ちゃんに両掌を
向けて待ったのポーズをしてみせる。
「いや、落ち着くのはそっちだろ」
そう言った桐生の顔色は何も変わらず、まるで恵菜ちゃんが来るのを知っていたかのようだ。
私も雅も訳がわからないという顔をしていると、それを見た2人は顔を見合わせてクスッと笑って見せた。
ん? なんだか2人してとってもいい雰囲気なんですけど。
それってもしかして……。
「ねえ、あなた達ってもしかして……」
雅が先に口を開くと桐生がそれに続いて話し出した。
「あぁ、 俺たち付き合い始めたんだ。 社内では今まで通りにするつもりだから先に言っとこうと思って今日誘ったんだけど思わぬ方向に流れちゃったな」