上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
色々考えて私は “ 尊さん ” から “ 結城課長 ” と呼び名を戻すことにした。
と言っても結城課長と2人きりになる事もないからそんなのどうでもいいことなのかもしれないけれど、毎日のように結城課長の帰りを待っている彼女を見ていたら私は名前で呼んでいいような立場ではない気がしたから。
きっと結城課長がずっと忘れられないでいる人とは矢野真奈美さんのことなんだと思う。
「世の中って不公平だよね、 あんな綺麗な顔してるんだもん。 肌も白くて背も小さくて、男の人ならみんな好きになっちゃうよね」
「課長にはっきり言われたわけじゃないんでしょ? 何か理由があるかもしれないよ。 連絡とかないの?」
「もともとお互い電話とかしないから何もない」
お弁当を食べ終えて苺が入ってる容器をあけ雅の方へ向けると「ありがとう」と言って1粒口へ運ぶ。
「だいたい課長も課長よ! 亜子がいるのに何考えてるのよ!」
怒っている雅の口元にもう1粒苺を放り込む。
「あのね、雅は怒るかも知れないけどこのまま自然消滅でもいいかなって思ってるんだ。 忘れられない人がいるってはじめから知ってて付き合ったんだし、私も本気になるのが怖くてそれを利用してたわけだしね……ずるいのはわかってるんだ。 雅ごめんね」
「亜子が謝ることないよ」
雅はクッと唇を横に引いて切なそうな目で私を見る。
私は雅のこういう優しさに甘えてるのかもしれない。