上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
少しして着いたのはお父さんの時から何度か連れて行ってもらったことのあるお寿司屋さんだ。
涼太も東京に来た時は必ず行くみたいでお店に入ると従業員の人が「藤井様、お待ちしてました」と顔を見ただけでわかるようになっていた。
奥へ進むと個室のカウンターがあって私たちはそこへ通してもらった。
私は席へ着く前にどうしてもメイクを直したくてパウダールームに行かせてもらい、そのあと上着を預けて涼太と佐山さんがいるカウンター席に座った。
「おう! 涼太、佐山くんもいらっしゃい!」
50代後半くらいでかっちり刈り上げたグレーヘアの似合う男性は元気よく挨拶をしながら入って来ると私を見るなり目を大きく見開いた。
「こりゃ亜子ちゃんじゃないか! しばらく見ないうちに美人さんになったなぁ」
「おひさしぶりです。 ご無沙汰していてすみません」
ここに最後に来たのはもう何年も前のことで来たって言っても数回程度なのに私のことを覚えているなんてすごい。
やっぱり職業柄お客さんの顔を覚えるのが得意なのかな?
お父さんや涼太はいつもお寿司はおまかせにしてるようで今回もその日に仕入れたおすすめのネタを出してもらうことにした。
「亜子、明日何時頃迎えに行けばいい?」
「あ、 でも私朝会社に寄らなきゃなんだ」
今日担当してる会社からホームページが一部閲覧できなくなってると連絡があり修正したのだが、一応明日もう一度確認したくてそれから新幹線に乗って行けばいいと思ってたのだ。