上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
うしろめたさから桐生の顔を見れないで俯いているとちょうど相手先の担当者から電話が鳴った。
特に不具合は見当たらず問題ないとのことで担当者の方にお礼を言われてホッと安堵した。
「じゃあ、 先に帰るね」
私は桐生と2人きりなのが息苦しくてパソコンの電源を切って鞄とキャリーケースを手にしてから一言だけ言ってオフィスから出た。
エレベーターに乗って1階に着くまでの間に携帯を確認すると、約束してた1時間はとっくに過ぎていて涼太から何回か連絡が来ていた。
1階につきエレベーターを降りてから涼太に電話をかけてみるけど出てくれなくて何度もリダイヤルを押し続ける。
足早にエントランスを抜けてビルから出ると目の前の道路に黒のベンツがハザードランプを点けて横付けされている。
後部座席の横には佐山さんが立っていて私を見つけるなりニコッと微笑んだ。
会社の正面にいるとか信じられない!
私は周りをキョロキョロと見渡して会社の人がいないのを確認してから駆け足で佐山さんの元へ近づいていった。
「亜子さん、こちらは後ろに入れていいですか? 預かりますよ」
そう言って私のキャリーケースをトランクへ入れてくれた。
「遅かったな。 早く行くぞ」
後部座席の窓を下げて涼太が顔を出す。
言いたい事はたくさんあるけど、とりあえず今はこの場から早く逃げ出したくて佐山さんが開けてくれた後部座席へ乗り込んだ。